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平成21年秋より着任しました日本認知症学会4代目理事長の森啓です。この機会に一言ご挨拶いたします。
本学会は、大阪大学の故西村健教授を会長として開催された第1回「老年期脳障害研究会」学術集会をルーツとしております。その後、参加会員の増加を踏まえ「日本痴呆学会」として改組した後、「日本認知症学会」と改名、発展してきました。歴代の本学会理事長である石井毅、平井俊策、井原康夫各先生のご功績とお人柄を思うとき、私にはとても及びもつかない重責でございますが、認知症医療と研究の発展のために全力を尽くす所存でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。
認知症は、医学的な脳神経疾患でありますが、それ以上に家族や社会経済への影響が大きく、解決が急がれている重要課題です。なにより認知症に対する正しい理解がすべての出発点となるべきであり、この目的のために学会員一同が切磋琢磨、協力して、問題解決のために総力を挙げて取り組まねばなりません。日本認知症学会は平成20年から「専門医制度」をスタートさせ、わが国の認知症診療に少しでも貢献しようと決意しました。本学会がこの決意をした背景として、なお伸長し続ける平均寿命を反映して認知症患者数が増加しつづけている現実があります。この20年間で、わが国での認知症の医療受診者数は約30倍を超え、認知症患者は65歳以上の高齢者人口の10%前後にまでになりました。これら認知症患者の約7割がアルツハイマー病患者といわれています。しかし同期間にアルツハイマー病の基礎研究でも大きな進歩がありました。まず、アルツハイマー病の原因がアミロイドβタンパク質と呼ばれる小さなタンパク質であることが明らかになり、それに対する根本的な治療法としてワクチン療法およびアミロイドβタンパク質産生阻害剤などが提唱され、試みられてきました。副作用による一時的な中断もありましたが、なお改良を含めて新規薬剤の開発が精力的に行われております。さらに、大規模な前向きコホート研究から高血圧、高脂血症、糖尿病という生活習慣病がアルツハイマー病のリスクとして示されつつあります。これらの知見は、まだ多くの分析と検証が必要でありますが、確かな科学的エビデンスとして集積されつつあります。最後に、平成20年度から動き出した大規模なアルツハイマー病診断プロジェクト、J-ADNI (Japan Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative)が先端的医療現場で推進されていることをご紹介しておきます。このプロジェクトが成功裏に進めば、アルツハイマー病の診断が、客観化され、早期診断が正確に出来るようになり、また治験の速度、精度が大幅に上昇すると思われます。
われわれ認知症学会は、基礎および臨床研究の推進により、さらに、その成果を身につけた「専門医」によって、正確な診断と治療をもってアルツハイマー病をはじめとする認知症制圧に向けて社会に貢献したいと願っています。

平成21年11月


理事長

理 事 長: 森   啓
大阪市立大学教授

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